【完】『雪の都』

そのやりとりを薫は黙って聞いている。

目も閉じていた。

あれほど話し好きな薫が黙っているので、次第に深雪も彩も口数が減った。

すると薫は。

「…明日早いから」

とだけ言うと席を立った。

すぐさま桜子が追いかけてゆく。

「…あーあ」

深雪は窓を見つめながら、闇を抱えたような目でワインを空けると、

「ちょっとお手洗い行きます」

と椅子から離れた。



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