【完】『雪の都』
枕元には、看護師や医師がいる。
「容態は?」
薫が訊いた。
「さすがに厳しいかと」
医師の台詞に薫はさすがに腹を据えたらしく、
「もう、あかんのかなぁ…」
思わず目をそらした。
「お母さん私です、桜子です」
桜子は声をかけてみた。
すると。
わずかに握っていた右手を、桜子は握り返された。
「…」
言葉はない。
が。
何かを桜子は察したのか、
「分かりました」
桜子が答えると、握り返されていた力が抜けた。
「…御臨終です」
医師が時計を見た。
薫は天井をあおいだまま、身じろぎもせず、ただ黙って最期を受け入れようとしていたが、臨終の二文字を聞くと膝から崩れ落ち、声を放って哭いた。