【完】『雪の都』
そうしたなか。
四月の始めに薫のオカンの四十九日があって、ひさびさに薫は小樽へ帰った。
が。
懐かしいはずの住吉神社も、南小樽の坂も、水天宮も、堺町の道も何も感懐らしい感懐は浮かばず、まるで観光客にでもなったような感覚をおぼえた。
学生時代の多感な時期に、この街にいなかったことで、薫は自分の心の拠り所が生まれた小樽ではなく、中学から大学を出るまで過ごした京都にあって、本来の地元のはずが、まるで異国へ来てしまったような、自分の居場所がなくなってしまったかのような、空虚な感情しか受けなかった。