【完】『雪の都』

《5》


桜の季節が来た。

この年は珍しく四月の連休前に開花の宣言が出て、

「ねぇ、お花見に行きたい」

という桜子のリクエストもあって、薫は桜の穴場を探してみた。

すると。

山鼻の伏見稲荷の境内が穴場だということになって、薫は久しぶりに桜子を後ろに乗せ、神宮の裏手から堺川の坂をだらだらと登って、伏見稲荷へとバイクを転がした。



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