【完】『雪の都』

薫が澪の部屋で見たのは、ベッドで知らない男とまさにクライマックスを迎えようとしている最中であった。

が。

「澪、世話になったな」

とだけ言い、怒りもしないで帰ったという件である。

「そらまぁハラワタ煮えるわな、でもそこでキレたらなんか、器ちっさいやん」

薫には怒りを表に出さない面があって、本当に腹立たしいときには高笑いをするという奇癖すらあった。

そこが薫の怖さでもあったが、しかしある意味でフラットな、淡々とした普段の薫らしい、相手を不愉快にさせてはならないといった気の配りかたでもあったらしい。



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