【完】『雪の都』

「まぁ口直しでもしよか」

そう言って薫が連れて来たのは、伏見稲荷からそばにあった、旭山公園の展望台である。

「ここは久しぶりかなぁ」

確か小学校の遠足以来のはずである。

「うちなんかは仕事とか、ステンドグラスで行き詰まるとようここ来るけどな」

遥か先にはまだ雪をかぶった夕張の山並みや、まるで模型のような札幌ドームが見え、小さくビルの谷間にはテレビ塔や、よく待ち合わせた札幌駅も見える。

「でもこっち見たらな」

と薫は背を向けるように北へ顔を向けた。



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