【完】『雪の都』

すると。

山々の谷間の先に、わずかに海原が見えた。

「あの先に銭函の海岸があって、さらに向こうが小樽」

深い青を帯びた日本海は、冬の灰色はすっかり消え去って、春らしい鮮やかな色みを取り戻しつつある。

「夏なったら海ゆこか」

「うん」

桜子は明るくうなずいた。



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