【完】『雪の都』
《3》
ステンドグラス教室がはねた夜、桜子は表通りでタクシーを拾おうとした。
が。
なかなかつかまらない。
この日は札幌ドームでアイドルのコンサートのある日で、どうやらタクシーは福住に集中しているようであった。
バスも時間が半端で、待つには長すぎる。
桜子は困り果てた泣きそうな顔でいたが、目の前に一台のバイクが停まった。
「よぅ」
ヘルメットのシェードを上げると薫であった。
「鶴岡さん、帰るんか?」
「でもタクシーが見つからなくて」
「送ったるわ」
言うが早いか、ホルダーに下がっていた白いハーフのヘルメットを薫は無造作に桜子に渡した。