【完】『雪の都』
救急隊によって、薫は平岸の駅の近くにあった病院へ運ばれた。
桜子もついて行く。
一人で心細かったのか、桜子が出したメッセージを読んだ深雪が、タクシーでしばらくしてやって来た。
「…桜子?!」
憔悴しきった桜子は髪も乱れ、イヤリングが片方なくなっている。
深雪を見るなり、
「薫さんが…薫さんが…、深雪、どうしよう…」
深雪の胸に顔をうずめると、こらえきれなかったのか声を限りに放って哭いた。
それを深雪は、ただ呆然となすがまま立ち尽くすより他はなかった。