【完】『雪の都』
このときほど時間が長く、永久的に感じられたことはなかったのかも分からない。
夜が、更けて行く。
「お休みになられてはどうかと」
という病院の配慮で、空きのベッドで桜子は横たわると、瞬く間に寝息を立てて眠り始めた。
疲れはてたのかも知れない。
深雪は桜子から聞いていた実家に電話をすると、小一時間ほどして母が来た。
「薫さんは?」
「これがなんとも…」
ローカルのテレビでニュースになっていたらしく、
「同姓同名だからまさかとは思ったけど、薫さんだったとはね…」
としか言葉がなかった。