【完】『雪の都』
《7》
飛び込んだ先には薫がベッドで眠っていた。
「薫さん…起きてってば」
ねぇ、と薫を揺さぶる。
深雪が追い付いた。
「あのね、桜子…眠ってるように見えるけどね」
瞬時に桜子は睨んだ。
「そんなこと…そんなこと…絶対にないって!」
あんなに大人しそうな桜子が憑依したように、薫を揺らしながら呼び掛ける。
「お気持ちは分かりますが」
看護師に止められた。
「嘘だ…嘘だ…、絶対に嘘だ…」
桜子の取り乱しようは、見た目が桜子は悪くなかっただけに凄惨で、痛々しいばかりであった。