【完】『雪の都』

ともあれ。

そういった経緯で薫は他界したのであるが、このあと奇事があった。

搬入してあって薫の遺作になったステンドグラスの家のランプが、入賞したのである。

「最優秀新人賞」

という受賞ではあったが、

「なんにも嬉しくなんかない」

というのが桜子の偽らざる気持ちであった。

「確かにどんなプレゼントも、今の桜子には意味をなさないかも知れない」

でも、と説いたのは、他ならぬ深雪であった。

「薫さんのために、もらっといたほうがいいと思う」

この、

「薫のために」

というフレーズが、桜子の気持ちに微々たる変化だがそれをうながしたらしい。



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