【完】『雪の都』
それは薫が優柔不断だからとかではなく、人付き合いを重んじていた薫らしい残し方であったようにも桜子には思われた。
桜子は表彰式のときの疑問を澪にぶつけてみた。
「多分…薫ならまぁ、もらえるもんはもらっとくって照れるかも」
言われて桜子はハッとした。
確かに薫なら言いそうな、照れ隠しではある。
しかしそれは。
桜子が薫を理解できていなかったことの証左でもあった。
「…私、なんにも薫さんのこと、分かってなかった」
桜子は、あれほど薫は桜子を理解しようとしていたのに、みずからはそれをしようとしていなかったことに、ようやく気がついた。
「でもね」
と澪は言う。