【完】『雪の都』

しばらくして深雪がその知らせを受けると、

「もしかして…産むの?」

眉を寄せ心配そうに深雪は言った。

「だって出産ってお金がかかるんだよ」

それは桜子も、かつての同期で結婚した子から聞いて知っている。

「でも、薫さんの子だから産みたいの」

はじめから、桜子の意志は決まっていたらしい。

金額や育児の懸念をする周りをよそに、一旦こうだと決めたときの桜子ほど、強固なものはなかった。

「シングルでも未婚でも、無職でも産む」

と言うのである。



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