【完】『雪の都』
夏の花火大会の頃になると桜子のお腹は目立ち始めており、
「すっかり妊婦さんだねー」
感慨深く深雪は言った。
そうであろう。
去年の今頃はまだ桜子は信藤と不倫をしており、その二ヶ月ほどあとに行ったステンドグラスの教室で、薫と知り合うことになったのである。
「だから、誘ったのは悪くなかったのかなって」
深雪は笑顔で言った。
「きっとね」
桜子はお腹をさすった。
「子供の性別って?」
「女の子だって」
「じゃあパパ似だから薫さん似だね」
「くっきりした顔になるかも」
桜子はいとおしそうにお腹を撫でた。