【完】『雪の都』

臨月が近づいたのは秋の終わりで、

「予定日クリスマスぐらいになりそうなんですよ」

という桜子の話に、

「お母さんがバレンタイン生まれで、娘がクリスマス生まれなんてのは、面白い偶然だよね」

と御堂澤先生は反応した。

「うちなんか八月生まれだから、出産までがまぁ暑くて」

軽くボヤくと、桜子は思わず笑ってしまった。

「でも高梨さんと鶴岡さんが付き合うんじゃないかってのは、最初に教室に体験で来たときに予感があった」

という御堂澤先生の言葉を、桜子は初めて聞いた。

「今までいろんな人が体験とか来てるけど、こういうことってあるんだなーって」

自分がキューピッドになるとは思わなかったらしいが、御堂澤先生は悪くないというような顔で我が子をあやした。



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