【完】『雪の都』
手稲の駅前で桜子を降ろすと、
「ありがとう、高梨さん」
「なんやよそよそしいなぁ、薫ちゃんでえぇわ」
薫は他人行儀にされるのが苦手であるらしい。
「じゃあ、薫さん」
「まぁえぇわ、それよか坂キッツいけど、ここでえぇんか?」
「うん」
「まぁそんならえぇわ」
気ぃつけて帰り、と桜子が坂の上の信号の先へ消えるのまで薫は見届けてから、
「…美人やけど、訳ありかも知らんな」
とだけ言い残し、もと来た駅前の道を戻った。