【完】『雪の都』

手稲の駅前で桜子を降ろすと、

「ありがとう、高梨さん」

「なんやよそよそしいなぁ、薫ちゃんでえぇわ」

薫は他人行儀にされるのが苦手であるらしい。

「じゃあ、薫さん」

「まぁえぇわ、それよか坂キッツいけど、ここでえぇんか?」

「うん」

「まぁそんならえぇわ」

気ぃつけて帰り、と桜子が坂の上の信号の先へ消えるのまで薫は見届けてから、

「…美人やけど、訳ありかも知らんな」

とだけ言い残し、もと来た駅前の道を戻った。



< 20 / 192 >

この作品をシェア

pagetop