【完】『雪の都』

信藤は花火の音でわざと聞こえないふりをしたものか、

「君だってこれが露見したなら、契約の更新に関わるんじゃないのか?」

などと、逆にパワハラじみたことすら言って開き直る始末である。

「そもそも君が誘惑するから、こんなことになった」

と信藤は、桜子を置き去りに会場から少し離れた豊平橋でタクシーを拾うと、

「駅まで」

とのみ言い、その場をそそくさと離れて行ってしまった。



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