【完】『雪の都』
そのページは、蒼く生した苔に椿が一面散り敷かれている写真である。
「これ、椿寺かな?」
解説を読むと果たして薫の言う通りで、
「この地蔵院って寺のそばに昔住んどった」
と言った。
「いろいろあったけど景色はえぇし、のんびりしとるし、えぇとこやったで」
「いいなぁ」
桜子は羨ましそうに言う。
「けどな、知ってるからって世の中えぇことばかりとちゃうし、うちは桜子ちゃんみたいにずっと地元ってのもえぇなって」
「そうかなぁ」
桜子は何気ない返事をした。