【完】『雪の都』

そういうもんやで、と薫は、

「うちなんかあちこち旅したりしたけど、じゃあ見聞が役に立ってるかって言われたら、大した役立ってへんし」

と言った。

「だからもう四十過ぎたけど、いまだに自分がよう分からんことあって困るのや」

薫は苦笑いを浮かべた。

くっきりとした二重瞼の、くりくりした目がにわかにくしゃくしゃな笑顔で細くなる。



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