【完】『雪の都』
薫には薫なりに何か男前の定義めいたものがあるらしく、
「桜子ちゃんはどう思うか知らんけど、うちは粘っ気の強い男は好かん」
と言った。
「ほんまの優しさってのは、強さと正しさに裏打ちされとらんと優しさとは言えん、とうちは思っとんのやけどね」
酎ハイを干すと、
「すんませんカリモーチョください、桜子ちゃんは?」
「私は烏龍ハイ」
「あんまり無理しぃなや」
やんわりと薫は言う。
明らかにさっきのドスのきいた声とは違う。