【完】『雪の都』
駅に入っても変わらなかったが、地下鉄の改札を美女がくぐると薫は、
「じゃあな」
と軽く挨拶して見送った。
そこに。
「薫さん」
振り向くと桜子がいる。
薫はびっくりした顔を隠さなかったが、
「用事の帰り?」
といつもの声調子で訊いてきた。
「あのね薫さん…さっきの綺麗な人って?」
「あぁ、澪のことか」
あれは元カノや、と薫はさらっと言いのけてから、
「あいつな、今ちょっと厄介なことなっとるらしくてやな」
立ち話も何やから、と地下街のカフェに桜子を連れて入った。