【完】『雪の都』

《8》


次の教室から、桜子と薫は桜子が文具屋で買ってきた小さなノートを使って交換日記をつけ始めた。

土曜日ごとに会うので、互いに書いては持ってきて渡すといったスタイルで、

「交換日記なんて書いたことあらへんがな」

と薫は照れ臭そうに言ったが、その筆跡は見事なものであった。

書き慣れた書体で、しかし癖はなく、桜子は自分の可愛らしい字を見比べて少し交換日記を後悔したほどである。



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