【完】『雪の都』
忘年会の日。
先に午前中から会合や講師の仕事をこなしていた薫は、少しだけ時間があったのを使って、アンティークの雑貨屋を覗き、手頃な蜂鳥のブローチを手に入れた。
さらに。
百円ショップで小さな便箋と封筒を買い、地下街のベンチで何やらさらさらと書いて封をすると、待ち合わせの改札まで移動した。
改札に着いてすぐ、桜子が階段から降りてくるのが見えた。
「待った?」
「いや、うちも着いたとこ」
会場のホテルは東急百貨店の角の先で、少しだけ歩く。