【完】『雪の都』

桜子は薫のあっさりした返答に少し意外性をおぼえたが、

「まぁうちなんか言うてもバツイチやし、人生失敗だらけやし」

苦笑いを浮かべながら、来たばかりの酎ハイをグビッとあおった。

「うちみたいに失敗したやつって、今の世の中やと生きてる価値もないみたいな扱いやし、せやからなんかどうでもえぇわって捨ててかかってるとこかてあるし」

「そんな風には見えないけど…」

「まぁ捨ててかかってるから、失うもんないし身軽やから、フワフワして見えるんかも知らんけどな」

薫の眼は澄んでいる。

しかし。

その澄んでいる眼は諦観にも似た達観なのか、どこか何かを悟っているような、解脱したような眼差しをしていた。



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