【完】『雪の都』
少し飲んで話をしていた桜子と薫は、居酒屋を出て少し歩き、琴似の駅前までくると、
「気ぃつけて帰りや」
と薫はいつものように手を振った。
どこまでも紳士で、どこまでも優しい薫に桜子は見送られて改札をくぐったが、
「…ほんとはどんな人なんだろ?」
と人のほとんどないホームで小さくつぶやいた。
薫は桜子を見送ったあと、タクシーを拾って、
「新川の駅の方面まで」
と言い車中の人となった。