【完】『雪の都』
電車が、来た。
停まった。
さすがにそんなに混んではいなかった。
乗って海側のボックス椅子にかけると、築港を過ぎた辺りの熊碓のトンネルを抜けた先にあった、船浜の海岸に視線を投げた。
陽はすでに傾いて、もうすぐ山に陽は沈む。
海岸線を縫うように車体を右に左に揺らしながら、キィキィと音を軋ませながら電車は小樽の町から離れて行く。
桜子は海を眺めていた。
(今度は薫さんと一緒がいいなぁ)
などとなんとなく思いをめぐらしながら、電車は朝里の駅を後へ飛ばしてゆくのであった。