【完】『雪の都』

桜子の部屋は三階にある。

「女の子の独り暮らしの部屋なんか初めてやわ」

桜子に促されて上がると、白とピンクに統一された雑貨や家具がある。

「何か初めてやし落ち着かんわー」

薫は珍しくキョロキョロと見回す。

「薫さんって彼女は?」

「前に言うたかなぁ、フラれたって」

「…ごめんなさい」

「いや、自分が甲斐性ないんやろなって」

桜子がタンブラーを持ってテーブルに来る。

「ここの部屋ね、眺めいいんだ」

ベランダの先は平屋のコンビニで、その下は通りを挟んで眼下に夜景が広がる。

「私、札幌の雪の夜景って好きなんだ」

桜子がサイダーを注いだ。



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