【完】『雪の都』
桜子は萌袖(もえそで)でタンブラーを持ちながら、
「私はずっとこっちだし、北海道から出たこともないから分からないけど、でもずっと地元だと、例えば圭くんのことみたいな件があっても、簡単には動けなくて困る」
桜子なりの悩みではある。
「それは難儀やな」
「難儀?」
「せや、難儀や。まぁトラブルとか面倒くさいこととか引っ括めて難儀ってよう言うてるけどな」
薫はふっと笑う。
「しんどいとか難儀とか、まろやかに言うから関西弁って便利やろ」
「うん」
初めて桜子は笑顔になった。