【完】『雪の都』
ふと薫が時計に眼をやる。
「明日バイトとかやろ? ぼちぼち終電近いから帰るわ」
二十三時を過ぎている。
「…待って」
桜子は言った。
「あのね…薫さん」
「どないしたん」
「実はね…前に言えなかったことなんだけど」
桜子は一つ、深呼吸をしてから、
「…薫さんのことが好きです」
急に桜子は自分が発した言葉に恥ずかしくなったのか、耳まで真っ赤になった。
薫は呆気にとられていたが、
「…なるほど気持ちは分かった。せやけど」
薫はためらいながらも肚を据えたらしく、
「うちには言うてへんことがある」
と言った。