【完】『雪の都』
あのな桜子ちゃん、と薫は意を決めたように、
「うち、桜子ちゃんがどう思うか分からんけど…罪人の子やで」
桜子は自分の血が引いてゆくのをどうすることも出来ないでいる。
「…罪人?」
薫は桜子の顔を直視できずに、座ったまま背を向けた。
「せや。しかもうちのオトンは、うちの弟を手にかけよった」
つまり加害者の子であり、被害者の兄でもある。
「それが分かると、過去に知り合った女の子たちは、みんな親が反対したり、急に番号変えたりして逃げてゆきよった」
薫の心の中には、桜子には計り知れない澱みと、無明の闇のようなものがあって、その闇に飲み込まれそうになりながら、必死で薫は踏ん張っているようにも思われた。
「実はうちも桜子ちゃんのことは気になっとったんやけど、いつかそれで桜子ちゃんにもいなくなられるんとちゃうかなって、せやからどうにも出来んかった」
薫の肩が震えている。
桜子は無性に薫がいとおしくなったのか、震えている薫を背後から抱き締めた。