甘えたで、不器用でも
「では、いきますよ」
「え、」
「スタート」
私の手を離すと突然「スタート」と言っておもむろに自分の手元にあったポッキーをひとりで食べ始めた。
あれ?ポッキーゲームをすると言っていた数秒前の彼はどこにいったのだろうか。
なんだかものすごいスピードでカリカリ、カリカリポッキーを食べる彼にまさかと思った。
「ねぇ、ちょっとストップ!」
「え、あの、」
先ほど彼に掴まれたように今度は私が手を伸ばしてポッキーを口へ運ぶ彼の手首を掴む。
「え!?」という驚きの声を上げた目の前の彼はぽかんとした表情。
いや、まさかとは思うけれど。もしかして、この人。
彼の手首を握る手の力を緩めながら「とりあえず、落ち着いてもらっていいですか?」と彼の持つポッキーを机の上に置いてもらい、恐る恐る疑問を問いかける。