甘えたで、不器用でも




「あの、ポッキーゲームをするって言ってましたよね?」

「はい、今まさにポッキーゲーム中でした」



「どうして止めたの?」と言いたげな彼の表情。
本当にまさか、まさか。もしかして、



「あの、ポッキーゲームってどんなことをするか知ってますか?」

「もちろんです」



私の問いに当たり前というような返答をする彼。けれどひとりでポッキーを勢いよく食べ始めたそこからもはや間違っているのだけれどと声を大にして言ってあげたい。


決して、私がポッキーゲームをしたいわけではない。けれどこの人の勘違いは気づかせてあげたい。



「あの、ちなみになんですけど、ポッキーゲームのルールを教えていただいてもいいですか?」



その質問に「あ、知らなかったですか?」と言い先ほど机に置いたポッキーの袋を手にして私に見せてくる。



「ポッキーゲームっていうのは、所謂ポッキーの早食い競争です」

「え、」

「この袋の中のポッキーを早く食べきった方の勝ちです」

「あ、そう……ですか……」



真剣な表情で優しく私にゲームの内容を教えてくれた彼だが、そのポッキーゲームは多分世の中のみんなの知っているポッキーゲームではない。


そういう楽しみ方をする方も中にはいるかもしれない。けれどポッキーゲームといわれたら誰もが違うポッキーゲームを想像するだろう。


< 108 / 125 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop