甘えたで、不器用でも
「はぁ、」
今日はせっかくのバレンタインデーだというのに、なんでくだらないことで喧嘩なんかしてるんだろう。
って、勝手に怒っているのは私か。なんて目の前から彼がいなくなり戦意喪失。
彼のために用意したチョコレートは未だ渡せないまま仕事用の鞄の中でこっそり息をひそめている。
せっかくのお休み、久しぶりにどこかへ出かけてデートをして、チョコレートを渡そうと思っていたけれど、
私の彼氏はどうやらモテるらしい。
昨日、バレンタイン前日。会社の女の子達から沢山のチョコレートをなんとも嬉しそうに受け取る彼の姿を目撃した。
私が怒っている理由はそれだ。たったそれだけ。たったそれだけなのに楽しみにしていたバレンタインデートを自分で無くした。
そんなこと、どうってことないって流してしまえば、もっと大人になればいいのに。
なんて、自分に言い聞かせる。もう手遅れだけれど。
ふぅっと、小さく息を吐き出しひと文字も読んでいない本をぱたりと閉じた。
どうやって仲直りしよう。てかもう仲直りも無理かななんて、今さら後悔ばかりして本当どうしようもない。
なんて、思っていたとき、
「機嫌は直りましたか、お姫様」
彼の優しい声が私の鼓膜を震わせた。帰ったはずの彼が目の前に姿を現わす。どうして。