甘えたで、不器用でも



「それで、どうしたんですか?」



再度、問いかけてみる。すると、黒縁眼鏡の奥で瞳をキョロキョロ動かし更に顔を赤く染め、少し挙動不審さを醸し出している。


そもそも、これほどまでに黙りならばそこまで聞かなくてもいい。そろそろ仕事に戻る準備をしなくてはならないし。



「あの、すみません。あまり話したくなければ別に大丈夫ですよ。ポッキーゲームのことは忘れて、仕事に戻る準備をしましょうか」

「あ、いえ、あの、聞いてください!」

「……はい」



私の質問のせいで変な緊張に包まれてしまっていた空気を和ませようと仕事に戻る準備を始めようとすれば、先ほどまで黙りだった彼の声音によってそれは阻止される。


あまりにも勢いのあるそれに、私はただ「はい」と答えるだけで精一杯だった。



「あの、11月11日はポッキーの日で、」

「……」

「昨日、女子高生たちが」



するりと、彼は俯いていた顔を上げた。黒縁眼鏡越しに真剣な瞳と視線が交わる。


あまりにも真っ直ぐで、まるで蜘蛛の糸に絡まるみたいに私はその瞳から目が離せなくて。



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