甘えたで、不器用でも
「あ!」
「え、」
と、彼はハッとした顔をして顔を上げる。勢いよく上げたせいで眼鏡が少し鼻の方へずれ落ちた。
それを恥ずかしそうに中指で弄りながら、ぽつりと唇から音を溢す。それは、それは、なんとも恥ずかしそうに。
「あの、今ので僕が、あなたのことを好きなことがバレてしまいましたね」
「……」
優しい声音が胸を擽る。じわじわする。どくどく鼓動が速くなる。胸が苦しい。頭がぼーとする。顔が熱い。
こんなの、ずるい。
なんだろう、こんなの直球で好きって言われるよりずっと心臓に悪い。不意打ちにもほどがある。
「あの、本当に突然変なことを言ってすみませんでした。いや、ポッキーゲームを勘違いしていたのはお恥ずかしいです。仕事に戻る準備をしましょうか」
「……」
「あ、なので、あとで本当のポッキーゲームを教えてください。知らないままでは恥ずかしいので」
フリーズする私をよそに、開けたポッキーの袋を入っていた箱に戻し始める。