甘えたで、不器用でも
頬を赤く染めた表情がなんとも蠱惑的で眩暈がする。
私はなにをしているんだろう。と急に恥ずかしくなって目を瞑ろう
とすればカリカリと急に彼が向かいからポッキーをかじってきた。
「っえ、」
さらに近くなる彼の顔に耐えきれず吐息を漏らし思わず、ポッキーから唇を離して後ずさる。
どくどくと、唸るような心臓の音。まるで自分のものではないような。機械でも入っているみたいにうるさい。
目の前の彼は口角を上げて咥えていたポッキーを食べ尽くした。
「ポッキーゲームは心臓に悪いゲームですね」
「……はい、とても」
「ポッキーゲームとは、先に唇を離してしまうか、ポッキーを折ってしまった方の負けなんでしたっけ」
「……」
ぺろり。唇で溶けたチョコレートを舌で舐め取ると中指で黒縁眼鏡に触れる。
「じゃあ、僕の勝ちですね」
「……ですね」
「では、僕のお願いひとつ聞いてはくれませんか」
「……なんでしょうか」
「あの、嫌でしたら本当に断っていただいて大丈夫です。しかもこんなずるいお願いの仕方なので本当にダメならダメと、」
「はい。お願いとは、なんですか?」
パタパタと、手で顔を仰ぎなら熱くなった顔を冷ます。
真面目に謙遜する彼の言葉を遮り小さく笑いを溢しながら彼の瞳を見つめ催促をすれば、私の顔はまた赤に染まった。
「……僕と付き合っていただくことは可能でしょうか?」