甘えたで、不器用でも


待ち合わせなんて慣れないこと、するんじゃなかった。



《ごめん、連絡遅くなって。仕事が長引いて》

「分かった気をつけて来てね」

《本当にごめん。すぐに行くから》



電話を切りスマホに表示された23時24分の文字を見つめる。
煌びやかなビルが立ち並ぶ中カップルたちは皆、腕を組んで私の前を通り過ぎていく。


私は彼と待ち合わせをしていたレストランの前で立ち尽くしていた。


そもそも、22時で予約をしていたけれど入れるのだろうか。てか、このお店何時まで営業しているのだろうと扉の営業時間を確認する。どうやら深夜2時まで営業しているらしいので入ることは可能そう。


今、電話があったということはまだ会社にいるに違いない。ここに着く頃には日付が変わってしまうかもしれないけれど。


仕事が終わって休む間も無くここに向かわなければならない彼に申し訳なくて、無理に待ち合わせなどしなければよかったと後悔。


ぐるぐるに巻いた白色のマフラーに顔を埋め、行き交う人々を見つめる。やっぱり今日はカップルが多い。どこを見ても男女セットで歩いている人が大多数だ。


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