甘えたで、不器用でも



「別になんにもなかったから大丈夫だよ」

「なんにもなくないだろ。肩抱かれてたくせに」

「不可抗力です」

「僕以外に触れられるなんて許さないけど」



言い返してやろうと思っていたのに、さらりとなんとも真面目な口調で落とされた言葉に喉がつかえた。


じんわり体が熱くなってそわそわする。
と、タイミングよく「お待たせしました」と運ばれてきたケーキとシャンパン。


小さめのホールケーキは私の大好きなチョコレートケーキで。上にはホワイトチョコレートのプレートが乗っている。



「ロウソクに火を着けさせていただきますね」

「お願いします」

「お写真も、お撮りしますよ」

「じゃ、お願いします」



ケーキに刺さったロウソクに火を着けてくれたお姉さんにスマホを渡す。シャンパンを手にし、少しだけ身を乗り出してケーキに近づいた。


向かいからは同じように彼が身をこちらに寄せている。
ぽつりと、私はひと言呟いた。



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