甘えたで、不器用でも
「助けてくれてありがとう」
「当たり前だろ」
「大好きだよ」
「あ、当たり前、だろ」
珍しく同様した彼の声音が聞こえてきて思わず笑ってしまう。23時58分。
「おふたり共それではお撮りしますね」
私たちの前でスマホを構えるお姉さんが、にこりと微笑んだ。
「それにしても素敵ですね」
「はい。大好きな彼がこの日を選んでくれて」
「仲良しで羨ましいです」
「さっきまで、ちょっと喧嘩してたんですけどね」
「喧嘩するほど仲がいいって言うじゃないですか」
お姉さんの言葉のあと、私にしか聞こえないくらいの囁くような小さな声音で彼は呟いた。
「 _____________ 」
だから私も 彼にしか聞こえない音量で呟いた。
「_____________________」
お姉さんの撮影の合図のあと、
「では撮りますハイチーズ」
カシャリーーと、響いたシャッター音。
23時59分。写真を見ると、彼も私も真っ赤な顔をしながら幸せそうに笑っていた。
12月25日、クリスマス。
今日は私たちの5年目の結婚記念日。
“俺と結婚してくれてありがとう”
“こちらこそ、これからも宜しくお願いします”