甘えたで、不器用でも
「あー、もう!お前、昨日会社の奴らにチョコレート渡してただろ」
「……うん」
「しかも他の女の子たちもチョコ配ってたし、俺にもチョコ渡してくるから、てっきり俺はお前からももらえると思ってたのに」
「……え?」
きっと恥ずかしさマックスであろう彼は、もうどうにでもなれとでも言わんばかりに言葉を並べる。彼の紡いだ言葉たちは長く続いていたけれど、要するにそれって
ひと言で言ったら、
「もしかして、やきもちですか?」
先ほどまであんなにペラペラと話をしていた彼は、私のその問いかけにこくりと頷くだけだった。
まさか、そんな展開が待っているとは思ってもいなかった。なんなら勝手にやきもちを妬いて彼を怒らせたのは自分だと思っていたのに。
小さく息を吐き出し、腕に預けていた体重を起こして座り直した彼は「だから今日楽しみにしてたのに」とまるで子供みたいな口調で呟き俯く。
「でも、お前なんか機嫌悪いし、」
「……」
「チョコくれる気配もないから、ムカついて帰ろうとしてみれば鞄の中に入ってるチョコ見つけて」
「……」
「ひとりで嬉しくなって」
その言葉たちに思わずベッドからダイブして彼にぎゅっと抱きついた。「なにいきなり」と驚いた様子の彼にお構いなしに抱きつく力を強める。