甘えたで、不器用でも



ぎゅっと抱きしめ返してくれた彼。優しくぽんぽんっとまるで赤ちゃんをあやすみたいに背中を叩かれた。


彼の体温は温かくて、心地いい。



「私も、」

「……」

「いっしょです、やきもち……です」



彼の耳元でぽつりと呟く。恥ずかしくてぎゅっと彼の顔に自分のそれを寄せ、カァッと体が熱くなる。



「私以外の女の子のチョコは受け取ってほしくなかったです」

「うん」

「嬉しそうにチョコもらってるから、嫉妬した」

「うん、ごめんね」



自分の気持ちを音にして吐き出して余計に恥ずかしくなった。なにを言ってしまっているんだろう。いつもの私なら絶対にこんなこと言ったりしない。


彼のせいだ。彼が普段言わないようなことを言うから、私までつられておかしくなる。


ごめんね、と言ったあとに聞こえた彼の小さな笑い声。
ぎゅっと抱きついた体から、どくりどくりと彼の鼓動が聞こえて心地いい。


彼の匂いに包まれて、どうしよう、本当に、どうしようもなく、好き。そう思った。



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