甘えたで、不器用でも
なんだかいつもより彼の零す言葉が甘くて熱くて、溶けてしまいそう。
「てか、普通彼氏にはバレンタイン当日に渡すよ、チョコ」と私が呟けば彼はまた顔を真っ赤にして「好きすぎて、我慢できなかったの」なんてさらに甘い言葉を続けた。
つられて私の顔まで熱くなる。本当、狡い。
まるで恥ずかしさを隠すように「チョコ取って」と、催促をしてきた彼。
私も恥ずかしさを隠すように彼に言われるがまま自分で用意したそれを手に取る。すれば彼は「あ」と、口を開けた。
食べさせろ、そう言うように。
包みを開けて箱に収まっている丸いトリュフチョコレートを彼の口へ運んだ。
と、
チョコレートを含んだ彼の唇が私の唇に触れた。
塞がれた唇から割って入ってきたのは甘い、甘いチョコレート。
「……甘い」
「うん……これで仲直りだ」