甘えたで、不器用でも



「お前、今日誕生日だろ」



彼の視線が私の瞳を捕らえる。じわりと、まるで彼の赤が指先から伝染したみたいに私の顔まで熱くなった。



「どうして、」

「……」

「どうして、私の誕生日知ってるんですか……?」



そう、3月14日ホワイトデー。今日は私の誕生日。私が早く帰りたかった理由はこれだ。


彼氏なんてそんな甘ったるい存在のいない私を高校の時から仲のいい友達が毎年お祝いをしてくれる。毎年彼氏ができない自分が情けないけれど。


だから、早く帰りたかったのだ。行きつけの店でみんなが待っているから。



「知ってるよ」

「……」









「好きな女のことなら」





なんて……?



「……え」

「誕生日、おめでとう」



ゆるりと口角を上げて微笑む目の前の彼。なんだその不意打ちは。不覚にもどきどきしている自分が恥ずかしい。


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