甘えたで、不器用でも
ぎゅっと彼は指先を握る力を込める。
顔を真っ赤にしながら、囁くように呟いた。
「てか、」
「……」
本当に、狡い。私は彼に握られていない方の手にある小さな箱を握りしめた。箱の中身はアクアマリンを模した飴細工。
なんなんだこの人は。こんなプレゼント、本当に狡い。
「俺と付き合ってよ」
彼の言葉は誘導尋問のようで。
ほらね。また。答えはたぶん“はい”しか用意されていない。
私の心臓は彼に聞こえてしまうのではないかというくらい、どくり、どくりと煩く鳴る。
そんな自分の胸にあぁ、なんだ、私も“はい”という返事しか持ち合わせていないのかなんて。私もなかなか狡い奴だからお互い様。
ぎゅっと、彼の指先を握り締めた。