甘えたで、不器用でも
「俺、お前のこと嫌いだわ」
「……」
ファミレスでカルボナーラをつついていると突然浴びせられた言葉。くるくるとフォークに巻いたカルボナーラを口に放り込んだところまではよかったが、思わず咀嚼するのを忘れてフリーズした。
ん?あれ?
フリーズした私は脳内で聞こえてきた言葉をリピートする。
“俺、お前のこと嫌いだわ”あれ、嫌いってあの嫌いだよね。好きの反対の嫌いであってますよね……?
自分の頭の中で冷静に。言われた言葉を咀嚼して、それと同時にカルボナーラもゆっくりと咀嚼した。
ごくりと飲み込み、小さくふーっと息を吐く。
「で?」
「え?」
「私のことが嫌いなんでしょ。で、どうしたいの?」
私の前に座る“俺、お前のこと嫌いだわ”発言をした男ににっこりと、全力で口角を上げじっと視線を送り問いかける。
と、今度は彼がフリーズした。
私はお構いなしにくるくるとカルボナーラを絡めとり口に運ぶ。動かない彼。彼の目の前に置かれたナポリタンが先ほどから一向に減っていない。もったいない、冷めてしまうではないか。