甘えたで、不器用でも
黙りな彼に、そっちが言い出したのに黙りとはなんだと言ってやりたい気分。
けれど、ぐっと堪えて次の言葉を用意した。
「いいよ」
「……え」
「私のこと嫌いなら、別れよう」
「え、」
さらりと、音にして彼の表情を伺う。
「さっき言ったでしょ。嫌いだって。いいよ、別れてあげる。これ食べ終ったらすぐ、帰るね」
目の前の彼に言い放ちひたすらフォークをくるくる回した。この状況で私が頼りにできるのはこのカルボナーラのみ。
ぽかんとした彼の視線がずっと私を見つめている。そのまましばらくまるで置物のように動かなかった彼。
どれくらいの時間が経っただろう。
お皿の上のカルボナーラはあとひと口というところまできている。それをくるくるとフォークで巻き取っていれば、ハッとした表情の彼は唇を開いた。
「あの……」と小動物みたいに、弱々しい声音で恐る恐る問いかけてくる。
「なに?」
彼の問いかけに、一応反応してみる。ぱくりとひと口。お皿の上のパスタを全て絡めとり完食した。さあ、食べ終ったので彼と別れて帰ろう。そう思っていた。