甘えたで、不器用でも



「本気で言ってるの……?」

「なにを?」

「え、俺と別れるって」

「だって、嫌いって言い出したのはそっちでしょ」



もっともな言葉を突きつければ「そうだけど」と弱々しく呟いて俯く彼。自分の発言にはもっと責任を持っていただきたいものだ。



「嫌いなのに、無理に付き合ってもらうのは悪いし」

「……」

「嫌いだってわざわざ言ってきたってことは、要するに別れたいってことでしょ?」



ごくりとお水を飲み干し、さて帰ろうと隣に置いていた鞄から財布を取り出す。と、それに慌てた様子で彼は「待った!」と大きな声を張り上げた。


ファミレス内に響いたそれに、他のお客さんたちの視線が集まる。恥ずかしいことこの上ない。



「ちょっと、急に大声出さないでよ!」

「だって……」

「だって、なに?」

「こんなはずじゃなかったのに」



しょんぼり拗ねる彼曰く、どうやらこんなはずではなかったらしい。じゃあ、いったいどんなはずになる予定だったというのか。



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