甘えたで、不器用でも



はぁ、とため息を小さく零し「だろうね」と、音にすれば驚いた表情が向かいから飛んでくる。


その顔に「はい全て白状して」と言えば彼はゆっくりと唇を開いた。



「今日は、4月の1日で、」

「うん、で?」

「……」

「……」

「4月の1日ってことは……エイプリルフールなわけで……」

「うん」



「そうだね」と、私が言えば彼はぽつりと小さく「……嘘です」と聞こえないくらいの音で言った。


彼は嘘をつくのが下手くそだ。不器用なくせに私を騙せると思っているあたり、本当に頭が弱いんだと思う。


だから、もしかしなくても彼はきっと、いや絶対気づいていない。



「そうだよ、今日はエイプリルフールだよ」

「だから、嫌いって嘘をつきました」

「うん、分かったよ。てか分かってたよ」

「え、じゃあなんであんなこと!」



必死な顔をして「なんで?」と言う彼に、あれ少し意地悪し過ぎたかなと反省。でもそろそろ気づいてほしい。



< 34 / 125 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop