甘えたで、不器用でも
と、
ナポリタンを飲み込んだ彼がじっと私を見た。
え、もしかして心の声が通じたのかと「なに?」と問いかければ、満面の笑みで彼は唇を開いた。
「お前のこと、大好きだから」
まさかの不意打ち。
面と向かって言われたのがちょっぴり恥ずかしくて、カァッと顔が熱くなる。不可抗力。なんで私がドキドキさせられなきゃいけないの。
「な、なにそれ、エイプリルフールだからそれも嘘?」
「嘘なわけないだろ」
あまりにも真剣に言うからどきりとした。
どうしていいか分からず「そっちこそ嘘でも嫌いとか言わないでよ」と彼を少し攻めてみれば「ごめん、もう絶対に言わない」と素直な返答。調子が狂うじゃないか……。
形勢逆転。不意打ちは狡い。恥ずかしくて「もういいから早く食べて」と催促をすれば「はーい」と腑に落ちない返事が返ってくる。
先ほど飲み干した手元のグラスにお水を注ぎ、ごくりと飲み込む。彼に向かってひと言。
少し遠慮がちに言葉を紡いだ。
「……私も」
それに彼が口元をゆるゆるにして嬉しそうに笑ってくれたからそれだけでいい。きっと真っ赤であろう顔を両手で隠し、なんだかんだ愛されてるななんて、ちょっと自惚れた。